半永久的に書き終わらない「人」という題材

ぼくの座右の漫画に『天才柳沢教授の生活』がある。

小学生の頃に読んで、人の描き方に衝撃を受けて以来、
20年以上続いている。

本書の主人公、柳沢教授のモデルは
小樽商科大学の教授だった著者の父である。
・・・

何を教えていたのか
子供だった私には
よく分かりませんでしたが
ひとつだけ明らかに
分かったことがありました


父はなによりも研究が大好きだったということ
研究が仕事で研究が趣味
世俗的なことはどうでもよかったことでした

私は子供時代
父に何処かに連れていってもらったり
一緒に遊んだ記憶もほとんどありません

でも

大好きなことにいつも熱中している姿を
見せる父が私たち四姉妹は大好きでした

そんな思いを込めて始めた作品が
天才柳沢教授の生活』です


天才柳沢教授の生活』(26)山下和美

関わりの濃さでも受けた言葉の量でもない。
相手に対する興味の深さが原動力。
「興味をもった人」という対象こそ、
本当に書くべきことなのだ。

そして、それはとても身近で
容易ではないテーマでもある。

村上春樹の小説に父が出てこないように。
・・・
書けば書くほど遠くなり、
近ければ近いほどわからない。

その「謎」こそがじつは
書き続ける最大の原動力だとおもう。

「身近な人の謎」に挑戦すること。


その多くは「父」であり「パートナー」。


森鴎外の『舞姫』はそのまま結婚していたら
作品になっていないとおもう。

「わかりあえない距離」こそ
書き続けられる最高のテーマであり、
書きはばかられるものでもある。
(だからこそ、人が読みたいことでもある)

教授のモデルの父が亡くなりました。
教授以上にマイペースで面白い父でした。

『天才 柳沢教授の生活』をついに
一度も読むことなくこの世を去りました。
あっぱれ!!

(同書)

最後まで読まないからこそ
モデルの父が亡くなった
今もなお描き続けているし
読み続けられているとおもう。


(理解しえないけれど興味がある)身近な人について書く。

天才柳沢教授の生活 26 (26) (モーニングKC)


【後記】
このテーマではじめて以来3日書かなかったのは初。
繁忙期につき、更新頻度が変わるかもです。