折に触れて読み返すマイベスト文

あなたには、折に触れて愛唱する詩や言葉がありますか。

つらくてたまらない時、
詩や言葉を口に出すことで、ずいぶん救われます。

読むだけではありません。
声に出すことで、言葉は体にすとんと落ち、
その言葉はあなたの芯に届くのです。
そして、あなたの言葉になるのです。


『孤独と不安のレッスン』鴻上尚史

僕が折に触れて読み返す言葉は、
池澤夏樹の『スティルライフ』。

ブログで紹介するのはもう5回目くらい。
(年に1回は紹介している)


いいことは、何度でも紹介し、書く。
言い続けることで伝わることもあるし、
自分が時間をかけてわかっていく。

この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。
世界はきみを入れる容器ではない。

世界ときみは、二本の木が並んで立つように、
どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。


きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。
それを喜んでいる。
世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。


でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。
きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。
きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。


大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、
セミ時雨などからなる外の世界と、
きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、
一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。


たとえば、星を見るとかして。


二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過ごすのはずっと楽になる。
心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。

水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。

星を正しく見るのはむずかしいが、上手になればそれだけの効果があがるだろう。

星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。


『スティルライフ』池澤夏樹

スティル・ライフ (中公文庫)


折に触れて読み返す文章や言葉をもつ。


【後記】
昨晩は月がきれいだったので、1時間ほどかけて
職場から自宅まで歩いて帰る。
考えにつまったら歩く。