「他人(ひと)の身になれ」と言われてもムリだから

佐藤雅彦さんが過去の世界中のCM作品を
まとめる基準は「自分の感覚」だった。

魅力的な物事に共通するなんらかの法則を
見いだそうとする時、彼がとる手法は
「好きだけど理由がわからないものを、
いくつか並べてみる」というもの。

慶應大学の講義ではこの手法を、
要素還元という名前で紹介していた。


『自分の仕事をつくる』(西村佳哲

なんとなくいいものをただ集めるのではない。
言葉にできない魅力や要素を探る作業が
要素還元だ。

自分の感覚、気づきから掘り下げる。

この掘り下げる、というのが
研究から創造(仕事)につながるポイント。

深度を極端に深めていくと、
自分という個性を通り越して
人間は何が欲しいのか、何を快く思い、
何に喜びを見いだす生き物なのか
といった本質に辿りつかざるを得ない。
[・・・]
自我のこだわりではなく、世界にひらかれた感覚を
もってその仕事を行えるかどうかか、
つくり手の器に大きさにあたるのだと思う。

・・・

社会人になったばかりのころ
「相手の立場に立て」とか
「お客さんの身になれ」と言われた。
「そんなの無理」と内面で毒づいた。


「他人(ひと)の身になれ」と
他人に言うことはひとの身になっているの? と。


つくることにかかわる仕事をはじめて
やっとその意味がわかってきた気がする。


ひとの身ではなく「自分の身」になるしかないのだ。


他人を理解するためには
なにか(作品)を媒介して
己を掘り下げていくことしかない。

・・・

自分という井戸を掘っていくと
他者という水脈につながっている。


水脈を掘り当てた人が
優れた作品を生み出す。

つくること、書くことも
他人との関係も。

そういう世界なのだと思う。

「つくる」ことの奥深さを知る。


自分の感覚を掘り下げる。

関連エントリー
31歳で電通のCMプランナーになった佐藤雅彦さんが一番最初にしたこと
http://d.hatena.ne.jp/sotacafe/20090212/1234443622


【後記】
春が近い。