村上龍の「筆記脳」

sotacafe2009-01-08

村上龍は風景と身体の描写がリアルだ。

『コインロッカーベイビーズ』は
自分が本当に走り、呼吸している気になる。

五分後の世界』や『半島を出よ』は、
戦闘シーンの生々しさに、読みながら酔った。

これは、映画『プライベート・ライアン』の
冒頭20分、オマハ・ビーチへの上陸作戦の風景に近い。

・・・

そう、まさに映画のような文章なのだ。

その秘密を著者自ら明かす。

 小説家にとっての最大の武器は描写力だとわたしは思っているが、
その素材となるのは記憶だ。特別に記憶力がいいわけではない。

 だが小さい頃から他の人と違うと感じることがある。風景の記憶だ。

まずだいいちに視覚、それに音や匂いが重なったものだが、
なんでもない「風景」の、誰も覚えていない全体や細部を
はっきりと頭の中に再現できて、小説を書くときには
それを最大限に利用する。


日本経済新聞村上龍(2006/10/24)

「風景」は、アラスカの大氷河から、
ある人物のちょっとした仕草まで
無限の種類を覚えているそうだ。

・・・

記憶を映像で保存し、言語化する。

五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の
つかい方で、認識や表現が変わる。

村上龍の表現力は、
視覚のインプットに優れているからこそ。
・・・

だれかの文章を読んだり、
自分の体験を思い出すときに、
どの五感をつかっているか。

出力はどれも同じ文章だが、入力がちがう。
この入力と出力のあいだに創作の秘密がある。
(これを「筆記脳」と命名してみる)
・・・
じぶんのフィルターを意識すると
入力と出力の質が変わる。
・・・
ちなみにぼくの場合、視覚と聴覚。

とくに聴覚は、人の発した言葉を
文章よりも、音で鮮明に覚えている。

それを文章で書いている。

だから、読書以外に対談、講演会もよく聞く。
i-Podでは対談CDや落語を
「文章のネタになりそうな言葉」として認識している。



経験のフィルターを自覚する。


【後記】
マーケティング本をもっと読もうとおもう。