村上龍の「筆記脳」
村上龍は風景と身体の描写がリアルだ。
『コインロッカーベイビーズ』は
自分が本当に走り、呼吸している気になる。
『五分後の世界』や『半島を出よ』は、
戦闘シーンの生々しさに、読みながら酔った。
これは、映画『プライベート・ライアン』の
冒頭20分、オマハ・ビーチへの上陸作戦の風景に近い。
・・・
そう、まさに映画のような文章なのだ。
その秘密を著者自ら明かす。
小説家にとっての最大の武器は描写力だとわたしは思っているが、
その素材となるのは記憶だ。特別に記憶力がいいわけではない。だが小さい頃から他の人と違うと感じることがある。風景の記憶だ。
まずだいいちに視覚、それに音や匂いが重なったものだが、
なんでもない「風景」の、誰も覚えていない全体や細部を
はっきりと頭の中に再現できて、小説を書くときには
それを最大限に利用する。
「風景」は、アラスカの大氷河から、
ある人物のちょっとした仕草まで
無限の種類を覚えているそうだ。
・・・
記憶を映像で保存し、言語化する。
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の
つかい方で、認識や表現が変わる。
村上龍の表現力は、
視覚のインプットに優れているからこそ。
・・・
だれかの文章を読んだり、
自分の体験を思い出すときに、
どの五感をつかっているか。
出力はどれも同じ文章だが、入力がちがう。
この入力と出力のあいだに創作の秘密がある。
(これを「筆記脳」と命名してみる)
・・・
じぶんのフィルターを意識すると
入力と出力の質が変わる。
・・・
ちなみにぼくの場合、視覚と聴覚。
とくに聴覚は、人の発した言葉を
文章よりも、音で鮮明に覚えている。
それを文章で書いている。
だから、読書以外に対談、講演会もよく聞く。
i-Podでは対談CDや落語を
「文章のネタになりそうな言葉」として認識している。
▼
経験のフィルターを自覚する。
【後記】
マーケティング本をもっと読もうとおもう。