【生の温度】『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』ランス アームス

ただマイヨ・ジョーヌのためでなく

自転車に乗っている。

学生時代に京都にいたことで、1日のうち1時間以上は
自転車の上で過ごしてきた。

今もそれに近い。

社会人になって、4年ほどBianchi
クロスバイクで、都内をずいぶん走った。

最近は、GIOSのロードバイクを買って、
これがバイクか、ということを実感している。

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原題は『It's Not About the bike』

25才で睾丸ガンになりつつも克服し、
史上初、ツールドフランス7連覇になった男、
ランスアームストロングの自伝。

今年の「TIME」にも世界に影響力のある
100人に選ばれていた。

自転車に乗るものとしてだけでなく、なにかしら
スポーツをする人、ある種の病を体験した人に
勇気をくれる。

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世界でもっともつらいレースと言われる
ツールドフランス

・・・引用

「ツールは単なる自転車競技なのではない。
それは人生を象徴するものなのだ。

単に世界でもっとも長いレースであるだけでない。
それはすばらしい心の高揚、極度の苦痛、また潜在的に悲劇を秘めている。
選手が考えられる限りの、そしてそれ以上のさまざまな事を、選手に味わわせてくれる。

寒さ、暑さ、山岳、平野、轍の跡、パンク、強風、口にするのもいやなほどの不運、
信じられないような美しさ、うんざりする無意味さ。

そうしたことから本当の自分が見えてくる。

精神と肉体と品性を確立するには、何年にもわたって自転車に乗り続けなければならない。

何百という試合に出場し、何万キロも走ることが必要だ。

脚に、肺に、頭に、心に、鉄のような強さを持つまでは、
僕はツール・ド・フランスでは勝てないだろう。一人前の男にならない限りは。」


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スポーツは人生にたとえられるが
「ガンと自転車は似ている」と言えるのは
スポーツ選手の中でも著者だけではないだろうか。

どんな経験も、自らの糧にする姿勢。

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文庫本が最近出たが、個人的には単行本の装丁がいい。

コピーもいい。

「人生はときに残酷だけれど、それでも人は生きる、鮮やかに」

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それでも人は生きる。

素直でまっすぐな著者が、すべてを綴っている。

もっと走ろう。

内に眠っている情熱をよびさます本。