対談本2『脳と日本人』(茂木健一郎、松岡正剛対談)

脳と日本人

松岡正剛茂木健一郎の対話。

一貫したテーマではなく、
散文的に広がっていくスタイル。

個人的に一番印象に残ったのが
松岡正剛の生い立ちからと問題意識。

対話の中で聴かれないと出てこない
3つの体験談。

・・・

1.吃音少年だったことが、アタマの中を
 言葉にすることへの距離に興味を持たせた。
 
2.親戚の女性が植物状態から回復する過程で、
 人間の身体は何によって管理されているのか、

3.父親の死の直前に年齢退行をおこす。

・・・ 

これか3つが身体、環境、場面、脳と関わる
ルーツであり、 認知、再生、記憶を考える、
考えざるを得ない実体験。
 
「生と死のぎりぎりでラディカルな思索をした」
という問題意識の根におどろく。

その他の問題提起を二つ、
世界のサイズとモデルづくりの話。

今後の個人的なテーマでもあるので、引用。

・・・引用?

松岡正剛
でもね、普遍性だってもっとサイズを小さくすれば
いいんですよ。(略)シェイクスピアが「世界劇場」
と呼んだものぐらいがいいと言ってもいい。

ユニバーサルというのは障害を越えるという意味
でしょう。

茂木健一郎
断じて「グローバル」じゃないですね。

ユニバーサルなものの単位というのは、
障害物型のモノに必ず内包されているんですね。

だから、この閾値(限界点)の中で「世界」を
うまく語ったほうがいいのじゃないかと思いますね。

・・・引用?

自由主義市場と国民国家とインターネットを
包括したモデルが、未だに提示されていない」

・・・

もうひとつ、終盤に二人のスタンスの違いが出る。

茂木健一郎クオリアという「心脳問題」
からロゴス(法則、理法)を見いだし、
展開していきたいと言う。

松岡正剛は他者の中に思索が育まれる
手伝いをする(ガジェットを預ける)と言う。

これは、編集学校や20代で創刊した
雑誌『遊』から離れ、工作舎を引き渡した
姿勢からもわかる。

それでも二人とも、教育に携わり、
そのチャネルとなるメディアを雑誌なり、
テレビなりで持っているという意味で、
時代の最前線にいる人。

二人の珠玉の対談集は、あの安藤忠雄さん
も「面白くて2回目を読んでいる」そうだ。

世代は違うが、時代の表舞台で活躍する
両者が本気で語るとこういう話になるのか、
ということで必読の一冊。

(余談)
今日、茂木健一郎さんが 『脳を活かす勉強法』の
出版記念公開授業に取材に行ってきた。

やわらかいスタンスと中学生にわせた
やわらかいコミュニケーションスタイルは、
まなんでいきたい。

http://d.hatena.ne.jp/sotacafe/20080314