Coyote特集:井上雄彦 「バガボンド、水の里、火の国へ」

Coyote (コヨーテ)No.27 特集:井上雄彦[バガボンド、水の里、火の国へ]


coyote』は好きな雑誌。

相手を選び抜いて、継続して
インタビューし続ける。

『switch』は昨年20年を迎えたが
新井敏記さんの編集者魂あっての雑誌。


個人という点ではなく、
時間軸を加えた線としての発信。


桜井和寿桑田佳祐池澤夏樹
文化を生み出し続ける個人の裏側の顔
聞き手と話し手の成長過程が見える雑誌。

個人的な紙メディアのロールモデル


そして、今回は井上雄彦

バガボンド』は20回以上読み、
単行本の表紙をオフィスの机の前に
貼っている。

・・・

テーマは多くの死が描かれる26、27巻
を中心に「死」について。

生を生たらしめるのは、死があってこそ。

葉隠』ではないが、これをどのように
漫画で表現するか、描いている時に、
作者は何をおもい、考えているのかを語る。

・・・

印象深いのは、
原作『宮本武蔵』(吉川英治)と
違う書き方をしているところ。

この違いに著者の「死」についての
考えかたが見える。

・・・
著者は闘う(試合う、死合う)者に
ついてはルールがあるとする。

死の覚悟を持たないものは、
闘う土俵にいない。

だから死を選ばせない。
(これは佐々木小次郎の巻で
具体的に出てくる)

古典、名作から新しい作品を
現代のコンテクストで描き出す。

そして、それらは再び時間を経て
古典となり、新しいものがたりを遺す。

浦沢直樹の『PLUTO』(プルートウ)しかり。
(原作は手塚治虫の『鉄腕アトム』)

歴史の中に身を置きつつ、
新しい作品を生むスタンスは
自分が仕事をする上でも見習うべきところ。

・・・

ちなみにこの「歴史の中に身を置く」
という話は、昨日紹介した
村上春樹河合隼雄に会いに行く』
に通じている。

ねじまき鳥クロニクル』を書き上げた
村上春樹は、初めて歴史(と暴力)を
作品にもりこんだ。

このことについての言及。

「僕が思ったのは、日本における個人を
追及していくと、歴史に行くしかないんじゃないか
という気がするのです、うまく言えないんだけど。

(略)歴史という縦の糸を持ってくることで
日本という国の中で生きる個人というのは
もっとわかりやすくなるのではないかという気が、
なぜかしたのです。」

・・・
前段で「自分だけのスタイルをゼロから築いてきた」
という村上春樹が、歴史と個人を結ぶ。

個人の自立(のための作品)
に歴史を位置づけるスタンス。

これが、井上雄彦浦沢直樹村上春樹
という歴史に残るであろいう作品をつくる
個人に共通している意識であること。

このことに注目したいと思った。

・・・

本が、短い間でも評価を得つつ、
なおかつ時の試練に耐えうる。

例としてあげたものは、漫画だが
ビジネス書でも、そういう本があって
いいと思う。
(古典と言われるものはその部類だが)

・・・

話が大きくそれたが、著者個人の
空手をやってたり、粗食だったり
生活がかいま見られるのもいい。

作品が生まれるところには
スタイルという生活の型がある。

・・・
(対談本ベスト3も続けます)

漫画や雑誌ももっと
紹介していこう。

つまるところ、これらの本の紹介を通じて、
「自分は何がいいたいのか」ということを
さがすために、書き続けている。

気がする。


葉隠入門 (新潮文庫)

バガボンド 26 (26) (モーニングKC)