『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(村上春樹、河合隼雄)

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)

対談本ベスト3を紹介。

まずは、『村上春樹河合隼雄に会いにいく』。


人生で初めて読んだ対談本であり、
今のところベストと呼べるだけの
インパクトがあった。


単行本が出た10年以上前から、
何度読んでも発見がある。
(ブログで紹介するのも4度目)


身体、物語、夫婦関係、個人。

今、という時代をタフに生きていく上で
必要な知恵はここでほぼ語られている
と言っていい。

二人とも時代を経て当時の場所から、
さらに高みを目指している(河合隼雄
いたになる)。

また、二人のコメントについて
それぞれがフォロー解説を
入れているのも、読みやすい。

発言を汲むすばらしい編集。


今回、再読してなるほどと
思った箇所を引用。

反体制、ではない時代に。

長いが、村上春樹のコメントを
ふまえて河合さんの解説コメント。

何でも「裏がえし」というのは、
その元のものとほとんど変わりは
ありません。

「体制」を措定して、その裏返しの
「反体制」を考えるやり方は、
「体制」の中に本質的には
組み入れられているのです。

そこでのコミットメントは
表面的にどれほど烈しくても
深さがないので、永続きしないし
弱くなってしまいます。


現在の若者のすべきことのひとつの見本として、
村上さんのして来られたことを考えることができます。

体制の裏がえしの反抗ではなく、
「ほとんど何もないところに、
自分の手でなんとか道を拓いて、
僕なりの文学スタイル、生活スタイルを
築き上げて」いくこと。

そこから新しいものが生まれるし、
それは図式的に考えた反抗へのコミットメントが、
頭だけのことで線香花火的に消えていくのに対して、
「自分なりのスタイル」を築くために、
自分全体をあげてコミットメントを
しなくてはならなくなる。

そしてそこから自分の「作品」が生み出される。

この「作品」というのは、何も芸術作品のみを
言っているのではなく、その生き方そのものが
「作品」と考えるのです。

スタイル。

反体制ではない場所から
「ほんとど何もないところに、
自分の手でなんとか道を拓いて」
始める、続けること。

ここまで来る勇気の後押しに
二人のことばが響いている。


スタイルを築く。

○関連
対談本の読み方
http://d.hatena.ne.jp/sotacafe/20080414