人を知る、エゴに入る読書

「苦手な人はいないの?」

最近、二人の人から同じ質問を受けた。

日本に限ってだが引っ越しが多く、
場所と仕事も転々としてきた。

自然と人とのつきあいは多少うまくなった。

「うまく」というのは公私ともに
ただ、仲良くすることではなく、
適切な距離感をとり、保つということ。

出会いと別れが多いと
人づき合いに意識的になる。

時間が経つにつれて、連絡を取り、
関係を続る大切さに気づかされる。

そして、うまさよりなにより
人への好奇心が大事なのだと気づく。

・・・

人間について、また人間関係を知るには
数多くの人に会うというよりも、読書が大きい。

読書というのは
他人のエゴに入り込むことだ

と言ったのはニーチェだった。

読書は一人の行為でありながら
このいろんな他者に入り込むことに
他ならない。

そこにはいろんな自分と違う違和感が
あり、共感と不快があいまじえる。

新しい著者の本に触れるということは、
そのエゴに触れ、入り込むことでもある。

想定、仮想、なりきることへ魅力とこわさ。

他者を知る読書、は結果として
人間の幅の広さと、自らの可能性を
少しでも広げる行為ではないだろうか。

河出書房新社から出た『世界文学全集』
を編集した池澤夏樹の刊行によせたことば。

「世界はこんなにも広いし、
 人間の思いは、 こんなに遠くまで飛翔する。
 それを体験してほしい」

・・・

体験中。