『モオツァルト・無常という事』(小林秀雄)

小林秀雄の『モオツァルト・無常という事』を読む。

昔、家にモーツァルトの全集があって
身に染みるほど聞いた。

その意味や歴史、背景を
知識として知るのはだいぶあと。

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そして、小林秀雄

日本の近代批評を確立した、
戦前の日本の知性を代表する人物。(Wikipedia参照)

昔は、わからなかったが、今はいいと言える。

精緻な分析、過去の携わってきた人の引用、比較。

そして、己が入った文体。

文体の精度、関係の密度の両立。

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批評の海原に出てみたくなるが、
己への問いかけから避けられない
壁にぶつかることが想像される。

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批評とは、なんだろう。

小林秀雄を読んでいると
「自己を含めた関係性の系譜づくり」
ではないか、と思う。

己はどこに位置できるのか。

現在さらには過去の作品と、
そこに連綿と携わってきた人の
関係性を再構築して、継いでいく。

才能のポジショニング。

自身のフィルターを通して
共感したこと、相反すること。

さらにはそれらの間に
通底していることまで掘る。

作品を生み出す著者の存在とは別に、
多くの関わりを再構築するこころみ。

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なるほど、と読んで納得するだけでなく、
偏見を吸収し、別の見方、感じ方を得る。

洗練された思考の跡の追体験

なかなか贅沢な試みだと思う。

途方に暮れる営みであるとも。

モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)